Reborn

著者:-

(episode1) 夕刻、仕事が終わり、職場を出ると雨が降っていた。 季節のお変わり目を告げる激しい雷雨だ。 草太は従業員用の傘立てに、置き忘れた自分の傘が無かったか探すが、女性物の傘以外見当たらない。 雨に濡れて帰るのは気が重いが、歩いて20分の自宅アパートまでだから走れば10分ほどで着く計算だ。 草太は意を決して雷雨の中を走りだすと、家路を急いだ。 一瞬のうちに雨水は全身を濡らし、シャツが肌にへばりつく。 商店街を抜け、河川沿いの堤防の上に駆け上がった時、赤ん坊の声が聞こえた。違う......。 あれは猫だ。 声のする方に視線を向けると、そこには出勤時には無かった段ボール箱が置いてあった。 草太は走るのをやめて、息を切らせながらその段ボールの前で足を止めた。 「捨て猫か......」 そう呟きながら、草太はそぉっと上面の蓋を開いてみた。 案の定、タオルが仕切つめられたその段ボールの真ん中にいたのは、毛玉のように小さな小さな子猫だった。 蓋が開いた事に気づいた子猫は緩慢な動作で辺を伺っている。 よく見ると子猫は酷く痩せて、衰弱しているように見えた。 「助けてやりたいが、うちはペット禁止なんだ......」 草太の声に反応した子猫は上目遣いで草太を見つめた。 子猫と目が合った瞬間、脳裏に無声映画の様な映像が断続的にちらついた。 なんだろ、この感覚......デジャブともちがう......。 子供の頃の記憶......?。 その交錯する記憶の中、一人の女の子の面影が投影された。 この子はだれだろうか?思い出せないが、ほんのりとほろ苦い感情だけが染み渡ってくる。 草太は不意にこの猫を助けたい衝動に駆られた。 気づくと草太は子猫を懐に抱え込んでいた。 (つづく)